幻想水滸伝Ⅳパロ―Ⅱ
建物の入り口近くに立っていたフミタンに案内されて中へ入るとクーデリアがいます。
「改めまして、クリュセへようこそいらっしゃいました」
「……そういう挨拶はもういいですよ。俺らはミカの紋章のことを聞きたいだけなんで」
三日月は勿論のこと、好奇心で周囲を見回していたシノやユージンも、オルガのその声音を合図に緊張を取り戻します。
港からここまで来る間の街とこの宮殿の警備の戦力を確かめたオルガは、下手に出るのを少しやめてみるようです。
「ええ、そうですね。失礼しました。ですが、その……何とご説明したらいいのか」
「はっきり言ったら?」
煮え切らないクーデリアに苛立った三日月がばっさりと吐き捨てました。
オルガからすれば慣れた物言いですが、1歩踏み出したフミタンの顔には「無礼な」と書いてあります。いいのです、とクーデリアが制さなければ彼女は三日月を諫めにもう1歩踏み出していたでしょう。
「それでは結論からお話します。
恐らくそれは、16年ほど前にこのクリュセにあった紋章だと思うのです」
戻ってくる運命だったのか……と感慨深く話すクーデリアの話をよそに、だからどういう物でどういう力があるのか、それだけ聞きたかった三日月やオルガの反応は冷ややかでした。
その名前を聞くまでは。
「それは『罰の紋章』といいます」
「罰…?」
その物騒な響きに、オルガ、シノ、ユージンの3人は思わず身体を強張らせます。
その場の全員が身動き1つしない中、ただ1人、 その左手にその紋章を宿す三日月本人だけが
「だから何に使えるわけ?」
という顔で自分の左手とクーデリアの顔を見比べるように首を小さく動かしました。
なんとか言葉を発したのはオルガ。
「……そんな紋章、聞いたことねえな」
「特別な紋章ですから。
それが16年前にこの国から解放された後……継承者を求めて行方知れずになったと聞いています」
「求めて、ってどういうことだ」
「それは… …罰の紋章はとても強大な、呪いといってもいいような力を発揮します。それだけで国を滅ぼすことも可能なほどの……。
ですがその代償に、使う度に継承者の命を食らう。食らいつくされた継承者は命を落とし、次の宿主を求めてその場に居合わせた者を選ぶのです」
詳しいことは遺跡の番人に聞いてほしい……そうクーデリアが告げる間、オルガを中心に集まるシノやユージンの関心は既にクーデリアには無く、オルガに救いを求めるような顔を浮かべていました。
罰の紋章?
誰もそんな話を信じたくはありません。しかし傭兵団団長の最期についての三日月の証言や、その直前の海賊の末路まで、 全て辻褄が合いました。
クーデリアの話では、三日月が罰の紋章を使用しても死なないということは、継承者として認められているのではないかということ。
その紋章が封じられていた遺跡の番人が居るとクーデリアに教えてもらい、三日月達は宮殿の横から続く遺跡を抜けて目的の人物が住む最奥へ向かいます。
ですが、クーデリアの話以上に特にこれといった情報はありません。
結局いつどうなってしまうかも分からないので、
「ミカ、それはこれから先使うんじゃねえぞ」
というオルガの結論で締めるほかありませんでした。
行く当てもまたなくなってしまい、オルガ達の気持ちは沈みます。
その上、三日月の左手には物騒な紋章。
「……行くだけ無駄だったね、オルガ」
「だな。その紋章の話があればお前の無実……不可抗力は説明できそうなもんだが……」
「んなこと、あのオッサン達が聞くわけねえんじゃねえのオルガ」
「シノうるさい。
あのさ、俺別に無実とかそういうのどうでもいいんだけど」
さて、生きる糧とこれからの指針はどうしようかと、遺跡から戻った一行が歩きながら議論をしていた時
「少し、よろしいでしょうか」
静かに声をかけてきたのはフミタンでした。
王宮を横切って遺跡と真逆の方向へ、海岸沿いの岸壁の上の道を通って暗い洞窟に案内された三日月達は、そこで待っていたクーデリアから1つの仕事を依頼されます。
それは今後の三日月達の行動や生き方を大きく変えることになる、
ギャラルホルンも傭兵団も群島も、全てを飲み込む長い長い航海の始まりになったのです。
