幻想水滸伝パロⅣ―Ⅲ

クリュセから所変わってこちらは軍国ギャラルホルンの要塞の一室。

議場の円卓を囲むように7人の要職が顔を合わせる場。

そこには、いつか三日月達を捕らえかけたマクギリスとガエリオも、
証言―という名の申し開き―を求められて列席していました。
この2人と、先ほどから「あれ」だの「光」だのと口にしているモノが今回の議題の中心です。ひと月ほど前に遠い南の群島諸島で目視された禍々しい光、三日月に宿る前の罰の紋章のことでしょうか、 それはギャラルホルンにも探知されていました。

その紋章はギャラルホルンも探していた禁忌の力。
近海に居てその力に気付かなかったのか、
もしや取り逃がしたというその子供が宿していたのではないのか、
「海神の申し子」などと呼ばれるにも関わらず何をしていたのか、
黙ってその言葉を聞くマクギリスに代わり、ガエリオが語気を強めて反論しています。

「ですから! 我々はあの辺境に不穏な反乱分子はいないか、その偵察任務に当たっていただけで、 その不審な子供を捕らえられなかったことやその紋章とやらを発見できなかったのは、マクギリスの失態などでは」

「ガエリオ。それくらいでいい」

す、と左手を挙げてマクギリスはガエリオを制しました。

「確かにその少年が例の力を手に入れた可能性はあるでしょう。 そこまで見抜けなかった私に落ち度があります。ですが、仮に彼らが力を手に入れたところで脅威になるようにも見えません」

マクギリスもあの時の少年達とその光を結び付けて考えたわけではありません。
むしろそう推測できていたならば、逆に密かに自分の手元に置いていたかもしれない。 そう思ったくらいです。

古い付き合いであったガエリオの父親もマクギリスを庇うものの、
終わる気配のない追及――

「この辺でいいだろう」

それを制したのは7人の1人、ラスタルその人でした。

「エリオン公……」

マクギリス周囲の空気がすぅっと3℃ほど下がったような気がして、
(面倒なことになったものだ)とガエリオは心の中で舌を出しました。
ラスタルはこの場に居合わせた人物の中でも、マクギリスが最も快く思っていない相手です。

それを態度で表すマクギリスではありませんが、ガエリオがひとまずこれ以上絶対に口は開くまいと決めてその背後から見守る中、目を細めて問いました。

「いい、とは。エリオン公」

「その子供の概要も含め、 …あの傭兵団はCGSとでも言ったか、そこへ内通する人間を見つけておいた」

狡猾そうな小柄な男をラスタルが招き入れて話を始めた途端に、話題はマクギリスから傭兵団と群島についての話題にあっさりと変わっていきました。

意外な方向転換の後10分ほどで散会となり、マクギリスとガエリオはマクギリスの執務室に戻りました。
用意させた紅茶を淹れながら、ガエリオはマクギリスを全く擁護できなかったと、申し訳なさそうに肩を落とします。

「すまんな、俺だけではなく父上までお前を庇いきれないとは」

「構わんさ。あのご老体達の小言など、大したことではない。
……それより、あの男」

「ああ、ラスタルが連れてきたあいつか。間者と言えば聞こえはいいが、 要はあの男は自分が属する組織と仲間を売ったんだろう?まったく、下衆にもほどがある!」

「それはともかく。
ラスタル・エリオンの考えはそれだけではないだろう。
以前から武器商人と通じて何か秘密裏に建造しているらしいという噂もある、
あの海域のめぼしい戦力を懐柔し、群島まで一気に攻め入る策を実現するつもりかもしれないな」

「お前が以前から口にしている腐敗というやつか。
しかし確かにエリオン公は強引かもしれないが、あの周辺海域は先日お前と共に探ってきた通りの貧しい場所だぞ。抵抗して被害を大きくするより、迅速に我らに投降させようという気も分からなくはないがな」

「……そうか」

それ以上、マクギリスはその話題に触れません。

(お前はそのギャラルホルンの腐りきった体質を、まさに今口にしたのだがな)

マクギリスはこの軍国の騎士でこそあれ貴族出身ではありません。
だからこそでしょうか。
その手法の非道さもさることながら、征服を当然のように強いるギャラルホルンの傲慢さは、マクギリスにとっては怒りと軽蔑で心を凍てつかせる冷たい炎のように感じるのでした。
それは何より他者の誇りを踏み躙るのだと心の中に灯す怒りや、しかし 軍人として自分が守るべきものは果たして…と静かに思案するマクギリスの心中が
ガエリオに伝えられることはありませんでした。

1 2 3 4 5

坏乃

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


コメントする