幻想水滸伝Ⅳパロ―Ⅴ

例えどんなに不気味なことが起こった夜でも、朝が必ずやってきます。
一体何があったのかと、サイ島の住民や三日月達は朝まで一睡もすることはなく、その日の朝を迎えました。

いつもと変わらず太陽が昇り、立ち込めていた霧が少しずつ晴れると、その惨状は誰の目にも明らかでした。
昨日までは遠目にも街の姿や森林が見えていたドルトの島は、何も乗っていない平らなお皿を真横から見たように何もなく、
かろうじて、島があった場所の両端の形だけが面影を残していました。

「……こいつは……」

海の向こうを眺めるオルガの表情は険しいものでした。

「オルガ、やばいだろあれ……」
「ああ、どうすんだ?寄ってからクリュセに戻るって昨日決めたけどよ、
交渉っていうかむしろ救助になるんじゃねえの?ていうか人、残ってんのかって……」

3人がサイ島の街へ戻って話を聞こうと話す中、三日月は黙ったまま昨夜の光のことを考えていました。

「……あれ、紋章か……?」高台の端から眺める三日月は呟きます。

罰の紋章と何か似ている、と感じたのですが、同じものとは思えません。
罰の紋章が狙った敵にじわりと浸蝕して一気に消し去ってしまう闇だとすれば、
ドルト島の消え方は、真っ直ぐな熱い光の棒で殴り焼き消してしまったように、三日月には思えました。

(なんか、でっかい大砲……みたいな)

その正体がなんであれ、昨日まで島であったその場所の姿から三日月が感じたのは、激しい悪意でした。
火山の噴火のような自然の猛威ではなく、人が人を捻じ伏せる、強い、強い悪意のかたまり。
自分や仲間に向けられたものではないけれど、それは攻撃だと、三日月の中の何かがけたたましく告げていました。
何か、自分と仲間の平穏を犯すものがやってくるぞと……。

三日月達は、昨夜の轟音についてサイ島の住民からできるだけ情報を集めたその上でドルトへ向かってみようか、
と決めて自分達の船を停めてある港へ向かい、坂を下りていきます。

すると、三日月達の姿を目にしたサイ島の長の男性が、家から飛び出してきました。
飛び出してきた時には真っ青だった顔が、オルガの顔を見た途端にみるみる赤くなっていきます。

「おいあんた!あの光を見たか!?」
「ああ。あれが何だったか、知っている人は?」

オルガは騒がしい港町を横目の端で確認しながら、慌てる男に問います。
しかし、彼はオルガの質問を理解する余裕がないのか、震えながら捲し立ててきます。

「ドルトは、ドルトは確かにギャラルホルンの哨戒船に抗議はしていたんだ」

「おいおいおっさん?」答えになっていない男の言葉にシノは呆れ、
「おい待てシノ、言い方」ユージンは慌ててその態度を諌めましたが、
彼は、シノやユージンには目もくれず、オルガに駆け寄り叫びます。

「それでも交戦したなんてことはなかったのに!なあ頼む、クーデリア様に伝えてくれないか!
この島にできることなら協力する、だから守ってくれ!!戦うんだろう!?ギャラルホルンと!!」

「はあ?あんた、昨日は散々、ギャラルホルン相手には大人しくしているべきだとかなんとか言ったじゃねえか」

怯えて縋り付いてくる様子は一晩前と同じなのに、正反対の主張をしてくるこの男の豹変っぷりに納得がいかないオルガは、
ついに強く出るようになりました。

「言ったとも!だが、昨夜のあのギャラルホルンの紋章砲、あんなものが出てきたなら話は別だ!」
「紋章砲?あれが?」

オルガだけではなく、その場の全員が「ウソだろ」と顔を見合わせました。

紋章砲は主に、海戦、海の上で船同士が戦う時に使われる砲塔です。
雷や炎の紋章の力をこめて敵の船に向けて放ち、相手の船を破壊するため。

それがまさか
島1つを消し飛ばす?

「ちょっと待て、あんた、何であれが紋章砲だって知ってる?」
オルガが男の肩を掴みました。

「映っていたんだ、録画機に」
「録画?」
「ああ、島にたまたま滞在していた発明家が、映像を……なんて言えばいいのか、こう、箱に残しておけるような……
見た方が早い!!」

島の長に連れられて、三日月やオルガ達は港町の酒場に向かいました。
案内された先には「発明家」と名乗る男が、三本の脚の上に乗った箱を持って窓辺に立っていました。
大きな四角い窓のようにガラスがはめ込まれている面を三日月が覗き込むと、男は「そっちじゃない」と言い、
その反対側の小さな丸いガラスの方を三日月に向けました。

言われるがまま三日月が目をぴったりくっつけると、そこには月と星が光る夜の光景が見えます。
「え?」
もう朝だろ?と三日月が反射的にガラスから目を外すと、周りの時間はやはり朝でした。

「ミカ?」
自分を心配そうに呼ぶオルガの声を聞きながらもう一度ガラスを覗き込み、
三日月はその箱の中の夜をじいっと眺めます。
静かな夜の海の中に、昨日の夕方に見た姿のままのドルト島がありました。

「……消えてない……」

「もう少しですよ」その箱の持ち主が言いました。

「!」

三日月の身体が小さく震えます。
ドルト島があったところへ物凄い速さで白い光が飛んできて、一瞬で爆発したのです。
爆発と言っても抉り取るように飛んできた光が一瞬で島をかき消したので、
燃えるものは残らず、火事にはなりませんでした。

ドルト島の更に向こう、遠くにうっすら見える高台には確かに砲塔のようなものが見えました。

「……紋章、砲……これが」
「ミカ!?」
1秒に3回ほど瞬きをして一歩後ずさった三日月の肩をオルガが支え、何を見たのかと今度は自分がその箱を覗きます。
「俺にも見せろよ!」ユージンも我先にと近寄りますが、小さい覗き穴は1人が目を当てるのが精一杯。
順番を待つしかありません。

「……何もねえ。もう、島も消えてるが……」
三日月は何に驚いたのかとオルガが首をかしげます。

「ちょっと待って、巻き戻さないと。そのまま覗いていてくださいね」
発明家は得意げに、箱の横から出ていたネジを操作します。

「っな……んだこれは!」

オルガが叫びました。

「なんのことだよ……!」
三日月と同じように後ずさったオルガを押しのけ、ユージン、シノも箱を覗きに向かいます。
2人の横で三日月はオルガに何を見たのか確認しようと尋ねました。

「オルガも見えた?」
「ああ……ミカ?お前が見たのは白い、光か?」
「うん。すごく速いのが飛んできて、島が消えてた」
「同じだ。どうやってんのかは分からねえが、録画っていうのは……。
なあアンタ」

ユージン達も叫び声をあげるのを満足そうに眺めていた男に、オルガは尋ねます。

「これは昨夜島に起こったことなのか?」

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坏乃

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