幻想水滸伝パロⅣ―Ⅲ

三日月とオルガ達の航海は、クリュセとクーデリア、 新しい寝床と仲間を掴んでから少し意味を変えました。

いつか三日月の無実を晴らしに傭兵団へと戻るのだという目標の他に、
生きる糧を稼ぐこと、そしてクーデリアから頼まれた人集めは、いずれこの群島を守る力になるはず……。

本来、三日月達が属していた傭兵団も、そうあるべきだったのではないでしょうか。 しかし現実は、得体のしれない交易船からお金をもらって護衛をしたり傭兵団の拠点があった島の領主の意のままに街を守っていました。
お金は必要です。
三日月はそれが気に入らないわけではありません。
今だって武器を鍛えたりご飯を食べるために、クーデリアからお金は貰います。

ただ、クリュセに滞在するうちに顔見知りになった住民から、
「クーデリア様の力になってあげておくれよ」と笑って声をかけられるたび、
誰かのお金を守るために戦うのではなくて、 自分の、誰かの大事なものを守るために戦うのは、なんだか気持ちがいいなと、 三日月はそう思うのでした。

クリュセに居着いて1週間後、本格的に仕事を始めることになったその日。
群島の海図を広げて、向かう島を決め、朝から船を出しました。
もちろん、三日月達が無人島で出来合いの木材から作ったボートなどではなく、狭いながら寝室や食堂を備えた船室がきちんとある船。

自分達が専用に使っていいとクーデリアから言われた日には、三日月は「ありがとう」と言ったきり、その大きな目には船と嬉しさと興味をいっぱいに写し、何時間も船を眺めたり触ったりしていたほどです。
その間ずっと無言の三日月を不安そうに見守っていたクーデリアも、
「ミカのやつ、あれは相当嬉しがってるな」とオルガが満足そうにお礼を言ってようやく、ほっとしたように笑いました。

航海を始めて10分ほど経った頃、船首から1人海を眺めていた三日月は、船の前方に見覚えのある顔を見つけます。

「……あれ、アトラ?」
「三日月!」

いつかの無人島で出会った人魚の女の子が、三日月達の船に並ぶように泳いでいます。
いるはずのない女性の声を聞きつけ、なんだどうしたと、オルガ、シノ、ユージンも 船室から出てきました。

「アトラ、ここまで来たんだ」
「三日月、助けて!」
「どうした、人魚の嬢ちゃん」

「……三日月の、友達?」
無人島を出る時に数分顔を合せただけのオルガ達には、まだ慣れない様子のアトラ。 不安そうに三日月とオルガを交互に眺めています。

「俺の家族」
「家族……そっか」
三日月の短い言葉を聞いて、少し落ち着いたようです。

「お願い、皆を助けてください!」
「皆?誰?」
「洞窟に居たお姉さん達。悪い人間に捕まっちゃったの」

「……人魚狩りか」チッと舌打ちをするオルガ。
弱い立場の者を自分の利益のために利用する大人は、オルガが人一倍嫌いなタイプでした。

アトラは、仲間が連れて行かれた正確な場所は分からないけれど、船が向かった方向は分かると言いました。
オルガが海図を広げて方角を見ると、クリュセの北東に少し行った小島が怪しく思えます。

そこがちょうど三日月達の目的の島の少し北であることもあり、
「まあ、ほっとくのもな」とオルガが指示を出すと、人魚を助けると聞いてシノとユージンは俄然張り切り始め、三日月は黙って剣の具合を確かめ、
その様子を見てアトラがようやくほっとしたというように肩の力を抜きました。

「アトラっていったか。どうする、泳いでついてくるか?」
「えっと、この船ってどれくらい速いんですか?」
「元々姫さんの仕事もある、急いではいるからな……さっきの倍は出すぜ」
「……うーん、大丈夫かな……」
「オルガ、あれは?」
「ん?ああ、漁で使う網か。おい、これ使えるか?」
「!ありがとうございます、そこに入れば楽そう」

ハンモックのような形に結んだ網を、シノがしっかりと掴みながら海に下ろしました。

そのハンモックの部分が海水に半分ほどひたりと沈み、
ぱしゃんと涼しい波を立ててアトラが乗り込もうとしたその時です。

「ちょっとアンタ達、女の子になにしてんの!!」

急に明るく高い女性の声が三日月達の頭上に響きます。

 

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坏乃

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