幻想水滸伝Ⅳパロ―Ⅵ

「オルガ……」

三日月の目にはもうガエリオは映らず、キン、と狼双を鞘に収めた彼は、倒れているガエリオをちらりと見て「仕留めそこなった」とため息をつきました。

上官に代わって取り押さえようとする兵3人ほどに蹴りや肘打ちを叩き込む三日月は、
また自分の船に戻っていきます。
三日月は短い助走だけで軽々とジャンプを成功させますが、この2隻の船の間は5メートルほどはあるでしょうか、
ギャラルホルンの兵はもちろん、オルガの隣に立つクリュセの兵も、あっけにとられて三日月が空を舞う光景を見ています。

三日月が無事に戻ってきたことを確認して、オルガはその船のリーダーに向けて声をかけました。

「言っとくが、群島諸島の海域で通告もなく先に敵意を向けてきたのはそっちだぜ。
お前達も海賊ってわけじゃねえんだろ、この辺にしとけ」

アインに手を借りて立ち上がったガエリオは、何か叫ぼうとしたのか口を大きく開けますが、
それは声にはならず、三日月を睨みながら苦々しく「ここは引いてやる」と口にします。

「何しに来たの、お前」と三日月は眉をひそめて訊くと、
「お前達のような不穏分子が我が本隊に制圧される前に、いつかの借りを返しに来たんだ!」とガエリオは叫びました。

「本隊だと?」
オルガの顔色が変わります。

「今更焦ったところで遅い。得体の知れない紋章を手に入れたのが貴様なのかどうかは知らんが、お前達と、中心の島……何といった?ああクリュセか、そこを中心に群島諸島が不穏な考えを持っていることくらい、我がギャラルホルンには筒抜けというわけだ」

「……ミカ、帰るぞ」

「うん」

「いいか!?次に会った時には必ず俺と戦えクソガキ!他の兵には渡さん、貴様には俺が引導を渡してやる!」

「どうでもいい、俺の敵になれば戦うだけ」

三日月は「チョコの、あの金色のはちょっと面倒だけど……」とぽつりと呟き、
「お前はそうでもないな、えーと、チョコの隣の人?」と首をかしげました。

「人の名前くらいちゃんと覚えろ!」

「覚えてない、名乗った?」

「名乗っているし、先ほどはお前が遮っただろうが!
ガエリオだ、ガエリオ・ボードウィン!」

「え?ガリガリ?」

「ふざけているのか――――!!」

当の2人以外がこのやりとりに困惑を極める中、2隻の船は離れ始めました。
今ここで戦えばもしかしたら勝てたかもしれません、しれませんが、それはギャラルホルンに戦争を仕掛けたことになるということを、オルガは分かっていました。
クーデリアは戦争は望んでいない、しかしそうは言ってもやはり向こうは侵略戦争のつもりなのだと思いました。

早くクリュセに戻って対策を考えなくてはと、オルガの頭はこの先の戦略でいっぱいです。
その傍らで、ガエリオと戦っている間になんだか腑に落ちないなという感覚に包まれていたことを思い出した三日月は、ギャラルホルンの船を追いかけるように数歩船尾に駆け寄りました。

まだお互いに顔が分かり、声もなんとか届く距離でしょうか。

「ねえ」

「ん?」

三日月の視線が自分に向けられていると気づいたガエリオは、半分身体を捻り、正面から宿敵に相対します。

「あの島が消えたのは、お前の国の紋章砲のせい?」

「消えただと?何を言っている、貴様」

「……」

「何のことだ!おい!!」

三日月は無言で首を横に振り、オルガが警戒を続ける船首へ戻っていきます。
説明しろと叫ぶガエリオの声は少しずつただの音になり、次第に船の影も小さくなっていきました。

「ミカ?」

「別に。卑怯だとかなんとか色々言うから、じゃあなんで夜にいきなりあの島を皆殺しにしたのかなって」

「……ドルトか。ああ、そうだな、まあギャラルホルンの偉いヤツは全部がああいうバカばっかりじゃねえってことだろ」

「そうだね」

「それより、早いとこクリュセに戻って、クーデリアに伝えねえとな。
あの様子じゃ、あいつが言ってた本隊とやらが押し掛けてくるのも時間の問題だ。まさか今日中ってことは、ないだろうが……」

そこで舌打ちをしたオルガは頭を掻きながら、操舵室の兵士へ急ぐように伝えに向かいました。
三日月がそのオルガの背中を見ていたところ、マストがバタバタと強く音を鳴らし、つい目線がそちらに向きます。
綺麗に晴れた空が何も変わらず広がっていました。

「……いい天気だけど、やっぱり雨、降りそう」

あいつらが来たからなのかな。
そんなことを考えていた三日月は、またすぐにこの剣に頼ることになる、と狼双を鞘から少し出したところで、
「あ、そうだ戻ったら、クーデリアのとこに行く前に鍛冶屋に寄ろう。おやっさん起きてるかな」と思いました。

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坏乃

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