幻想水滸伝Ⅳパロ―Ⅷ

三日月達がタービンズの海賊島を出てから今日で30日ほど、その間にこれで既に3回目の遭遇です。
今までの様子から、三日月だけで大丈夫だなと判断したオルガたちは、今回も本拠地船の甲板から見守っていました。
以前の大剣をシンプルな士官用の剣に持ち替えたガエリオは、三日月以外は眼中になく、毎回彼に白兵戦一騎打ちを挑んでいました。

「この……っ……!俺の部下達の、アインの、仇……っ!」

「ほんとお前、しつこいな……!」

一番うんざりしているのは当の三日月。前回など、そこそこのケガを負わせたのに食い下がってくるのが面倒で、気絶させて敵の船に放り込みました。

(オルガが殺すなって言わなきゃこんなやつ)

オルガは、今ここでギャラルホルンに余計な口実を与えるのは面倒だ、と三日月に頼んでいました。
そうでなければとっくにガエリオは足や手の1本くらい、三日月に奪われていたでしょう。
それくらいガエリオが動く速度は以前よりずっと遅く、満身創痍のまま補給もままならず、
もはや三日月を討つのだという心の力だけで動いているように見えます。

三日月は既に構えも適当になり、「お前の罪を償え……!」と涙を堪えながら繰り出すガエリオの剣先を悠々とかわし、
ため息をつきながら付き合ってやっています。

「……お前、死にたいの?」

「うるさい!!俺の部下は死にたくなどなかった!!」

「だから?」

「黙れッッ!!!」

「……ッ俺も、俺の家族だってそうなんだから、しょうがないだろ……!」

三日月は、今までに感じたことのない強いイラつきを感じています。
「そんなの当たり前なのに」
ガエリオの言動にそう思う度、左手の罰の紋章がちりちりと熱を帯びるようでした。

誰かの命を奪って恨まれること、恨むその気持ち自体は分かりますが、
三日月にとってガエリオの言葉は「お前にその権利はない」という叫びに聞こえ、
(なんなんだ、こいつ……!)
とドロドロした黒いタールの中にいるような気持ちになるのです。

「なーんかさ……」船の上で見守るラフタが寂しそうに呟きます。

「黙って討たれてろって……?ギャラルホルンそのものって感じね。あいつ」

オルガは
「それが誇りだのなんだの喚いてるんだから、こっちにとってはいい迷惑だ」とラフタに応じてから
(戦争で部下が死ぬくらい、ギャラルホルンにしたら普通のことだろ?あそこまで追いかけ回してくるか……?)
などと、足をコツ、コツ、と踏み鳴らしながら腕を組んで考えています。

三日月がガエリオの剣を受け止める度にキン!と澄んだ金属音が響き、オルガはその音をずっと聞いている間にふと、
傭兵団にいた時に威張り散らしていた大人や先輩兵士を思い出しました。
俺達の代わりに敵に切り込む鉄砲玉になれとぬけぬけと言う奴の方がいくらかマシな部類で、最悪なのはむしろ……

「……こういう、自分は仲間思いだとか大声で言って回るヤツの方が、実際一番味方を殺すんだよな……」

ガエリオの軍船には部下と思われる兵士が見えるだけで20人ほど乗っているようですが、みんな満身創痍で剣も鎧もボロボロ。
補給もままならず、ガエリオの復讐劇に付き合わされているのでしょうか。

お互い、この辺がいい加減潮時だ……とオルガが眉間にしわを寄せて深く息を吐いた時、
それまでの軽快な剣舞の音が急に止まり、ギャン!と不気味な音が飛び出しました。

慌ててオルガが音の方を向くと、三日月がガエリオの剣を甲板の上に叩き落し、その喉に素早く鋭い刃を当てたところでした。

「ミカ!!」

「……分かってるオルガ、殺さないんだろ」
低い声でオルガに応える三日月の目は据わり、いつでもこの剣を横に引けるのにと言わんばかりにガエリオを真っすぐ見下ろしています。
手から剣を落とし膝をついたガエリオは、大事なものが零れ落ちてしまったかのように、呆然と足下の甲板に伸びる三日月の影を見ていました。

その剣が自分を貫かないと知ったガエリオは、ゆっくりと首を動かして左側から自分を拘束する三日月を見上げ、
口を震わせながら抗議しました。

「……貴様、どこまで俺を侮辱するつもりだ、殺せるなら……」

「自分から死にに来たようなもんなのに、何言ってんの」

「何だと!?」

その声を聞いた三日月は思わず、くっ……と剣に力を込め、「ああ、そうか」と右手でガエリオの首を改めて締め上げ、
左手の剣を頭上に高く掲げます。

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坏乃

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