幻想水滸伝Ⅳパロ―Ⅶ
目を開けた三日月が横たわっていたのは、船の甲板やベッドではなく、赤黒い闇の中でした。
これはまた罰の紋章が見せている夢だろうと思い、周囲を見渡すこともなく、黙ってひたすら歩いています。
すると、目の前に赤い光がぼやりと浮かびました。
いつの間にか手に持っていた剣で三日月が反射的に切り倒すと、誰かの声が聞こえてきました。
「……アミダ、心配するな。行ってくる……」
「すぐに戻るさ」
知った人間の名前が聞こえた気がして、「なに?」と三日月は周囲を見渡しますが、やはり何も見えません。
また進んでいくと、赤い光が再び浮かび上がります。
同じように切り倒し、光が消えると声が聞こえてくる。
声は男のようです。
「……?」
以前、この罰の紋章の夢を見た時と全く同じように、三日月には自分以外の何かがいる気配すら感じられない中、その声だけが漂っては消えていきました。
何をしようか見当もつかないので、三日月はため息をついて、ひたひたと当てもなく闇の中を歩いていきます。
「こんなところで、死ねるか」
「何だ、この光は……!」
「俺はもう、帰るわけには……」
現れる光を倒しては進み、どのくらい経ったのか分からないでいると、三日月の数メートル先に黒い人の影がふっ……と立っていす。
顔はよく見えませんが、オルガより少し背が低い長髪の男のようで、三日月にはうっすらと見覚えがありました。
「お前、俺達の傭兵団を襲ったヤツだろ」
問いかけますが影は答えず、そして無抵抗のまま……。
三日月は舌打ちをして、「埒が明かない」と今までの光と同じように剣で一撃を与えます。
「……これで楽になれるのか」とぽつりと影が呟くと少しずつ姿は薄れ、最後にもう一言だけ、
「……アミダ、お前はまだ来るんじゃねえぞ……全員だ。俺は先に、向こうで酒でもやってるさ」
と言い残し、霧のように消えてゆきます。
「アミダって…あの海賊のアミダ?」と三日月が思ったその時、また意識が遠のき、彼は本当の暗闇に飲まれていきました。