幻想水滸伝Ⅳパロ―Ⅶ

さらりと答えを切り出す三日月が罰の紋章を前に差し出すと、アミダの顔色がいつになく険しいものに変わりました。

「……参ったねこれは……こんなものが出てくるか……罰の紋章とは……」

アジーが心配そうに「姐さん、それは……前にあの人が言っていた、昔クリュセにあった呪いでは?」
とアミダの顔を窺うと、ラフタも「あたしも聞いた」と相槌を打ちながら、
「なんか命を食うような厄介なもんだから近寄るなって」
と言いました。

アミダは彼女達に言葉では答えず、頷きながら、真っすぐ三日月を見たまま、
「三日月、お前がこれを宿したのは何故?まさかクーデリアが見つけてお前に与えたわけではないだろう」
更に問いかけを重ねます。

「俺達が住んでた傭兵団を襲ってきた海賊が持ってた」

三日月は更にさらりと次の事実を述べましたが、これにはタービンズの3人の様子が一瞬で変わりました。

「それは俺に説明させてくれ。いいよなミカ」

「うん。俺はそういうの向かないし」

「……話しな。最初から全部」

アミダに促されるまま、オルガは話し始めました。
アトラの仲間を助けた時には言わなかった経緯、何故、傭兵団を襲ってきたタービンズの海賊は死んだのか、死んだ後に何が起こったのか、罰の紋章が関わる部分も全て隠さず伝えました。

海賊が消えた後に罰の紋章が移った傭兵団の団長の最期は、唯一それを見届けた三日月が補足しました。
オルガは、事の顛末を話終えると最後に「こないだは黙っていて悪かったな」と謝り、アミダ達の人となりを詳しく知らない状況で罰の紋章のことを話す余裕はなかった、と付け加えました。

ただただ静かに話を聞いていたタービンズの3人の表情は、どんどん曇っていきます。
罰の紋章の性質を知っている3人は、彼のその最期は、おおよそ義の海賊とは程遠い寂しいものだったと、その場を見ていなくても理解してしまったのです。

彼女達の無念は、ラフタの口からぽつりと出た
「じゃあなんで……なんで三日月は生きてるわけ」
という言葉になってしまいました。

「ラフタ、やめな」

「姐さん!だって、そうでしょ!」ラフタはガタッと椅子から立ち上がり、両手を広げて訴えました。

アジーが彼女を押さえ、アミダが静かに宥めます。

「聞きなさい。
三日月が生きているのは……まだ命が食われ切っていないか、あるいはその紋章が名瀬ではなくて三日月を認めているか、そのどちらかだろうね。どちらにせよ、三日月には何も非はないのよ。
それに、これで全て合点がいくだろう?何か事故に遭ったらしいってやつさ、風の噂で聞いたあいつの話」

アミダの手が、隠すこともなく悔しそうに涙を浮かべるラフタの頭を撫でました。

「死んだというのは覚悟していたけど、アタシ達の誰もが分からなかった理由、最期の時まで決してこの島に戻らなかった理由がようやく、この坊や達のおかげで分かったんだよ」

「そうだよ……ラフタ、あの人は、この紋章をここから遠ざけたんだ。そうでしょう、姐さん」

「ああ、アジーの言う通り。本人から聞いたわけじゃあないが、きっとそうだろう。
それを宿した人間が死んだ時、災厄を撒くだとか、また別の人間の命を食らうとかいう話を、あいつも知っていたから。
……全く、あのバカ……」

天を仰いで考え込んでいたアミダは、一度目を瞑ってから三日月の方を向きました。

「三日月、前にも言ったけど、もう一度謝らせてほしい。うちの男が本当にいい迷惑をかけたようね。
そんな物騒な紋章をお前達のアジトに持っていくなんて」

「別に」

淡々と答える三日月の様子にアミダはふっと笑い、オルガを見て「いいわ」と言いました。

「これからは正式にタービンズの指揮をアタシが執る。この海賊団の主として誓う、お前達と手を組むよ。
ギャラルホルンをこの群島から追い出すまでね」

「本当か!」オルガは跳ねるように肩を乗り出します。

「ああ。まあでも今日はもう夜も遅い。明日になったらこれからの話を聞かせてもらう。とりあえず当面の目標はクリュセを奪還することになるだろうね。あの島を占領されたままじゃあ、この群島の戦力も士気もどうにもならないわ」

「ああ。ま、戦力に関してはアテがあるぜ。アンタ達の力を借りる必要があるけどな」

「お前達の傭兵団のことかい?さてはお前、都合よくアタシ達を使うつもりね。全く、いい度胸をしている」

貫禄ある海賊の余裕か、愉快そうに笑うアミダは三日月とオルガに解散を言い渡します。

三日月が広間から出ようと灯に背を向けた時、
「……誰もあんたを知らない地で1人、ね……」
とぽつり呟く声が、女性達の明るい喧噪の中でもはっきり聞こえた気がしました。

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坏乃

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